糖尿病は心臓病、血管病、万病のもと
糖尿病はインシュリン分泌不全もしくはインシュリン抵抗性により高血糖を呈する病態であり、多臓器障害をきたします。高脂血症、高血圧など多彩な代謝障害が併存しており、早期から心筋梗塞、脳梗塞などの血管合併症(複雑、びまん性)をひきおこします。軽症でも心機能低下(拡張障害)を示すことが多く、糖尿病合併心不全の予後は極めて不良です。
その他厄介な合併症として、網膜症(微小血管障害、失明の主因)、腎障害(透析の主因)、神経障害(難治性のしびれ、痛みの自覚がなく病気が手遅れになる、等々)があげられます。さらには免疫不全状態(傷の治りが悪い、かすり傷が命取りになる、等々)も大きな問題となります。このように糖尿病は全身病といえるわけで、深刻な問題であり、適切な管理が必要です。
また、最近メタボリックシンドロームが巷で話題になっていますが、内臓肥満を主徴とし、複数の代謝障害を呈する病態です。ライフスタイルの変化により日本でも増加しており、医療が取り組むべき最重要課題の一つです。日本においては高度の肥満はあまりみかけず、隠れ肥満のような形でメタボリックシンドロームが発現する場合が多いようです。
糖脂質代謝血圧異常が原因で心血管疾患を発症する事は一般によく知られていることですが、心血管系が能動的な内分泌活動を司っていることはあまり認識されていません。実際には血管内皮からは一酸化窒素をはじめとする種々の物質が、心筋からはナトリウム利尿ペプチドなどの生理活性物質が分泌され心血管系の恒常性を保持しています。
当科では代謝面から心血管病診療を推進していきます。